一般的な速読の方法
一般的な速読の方法としては以下の2つが有名だ。
- 読んでる時に無意識に行なっている音読をやめる
- 一度に認識する文字量を増やす
まず音読については、誰でも身に覚えがあるだろう。文字を読んでいるときに、無意識に心の中で文字を読み上げているはずだ。心の中で音読をしてしまうと、実際に声を出して読み上げるスピードで文章を読んでしまうのだ。心の中で唱えているお経のような読み方をやめて、単純に文字だけを目で高速で追っていくと、音読から解放されるようになる。しかし、これはけっこう難しい。どうやら意識的にやらないとダメらしい。
一度に認識する文字量を増やす方は、私たちの視点に関係する。私たちは文章を読むとき、そのまま視点が横にスライドしていくのではなく、いちいち視点を止めながら、いくつかの文字を認識し、また少し先に行って視点を止めて数文字を認識する、というのを繰り返している。そのため、視点が止まった時に認識できる文字数を増加させれば早くなるということだ。これも意識的な訓練で可能らしいが、だいたい3~4文字ごとに見ているようであれば、4~5文字に増やすだけで1.3倍くらいにスピードがアップするということだ。
ビジネス書は斜め読みで十分
速読の方法としてはそんなところだが、ビジネス書に限っては私の中でもう2つある。まず1つ目は、ビジネス書は斜め読み&要点把握で済ますだけで十分ということだ。
ビジネス書というのは、経営、マーケティング、経済、自己啓発などのビジネスに関するジャンルを扱った本であるが、中身は一般の読者向けに書かれているため、文章が平易である。そのため、専門書のように少し読み飛ばしてしまうと中身が分からなくなるということはない。
さらに、小説などと違ってストーリーがあるわけではないので、しょっとした部分があとで重要になることもない。重要なことは太字で繰り返し説明されるため、実はかなりのページ数を使って同じことを何度も言っていることが多い。だから、太字や繰り返し説明される内容さえ押さえておけば、斜め読みで十分なのである。
2つ目は、ビジネス書は前半後半があれば、前半だけ読めば十分ということだ。本というのは、一般的な値段設定をして売り出すためには、凡そで必要なページ数というものがある。しかし、著者がその本で言いたいことは、実はその4分の1程度で実際には収まるのである。そのため、著者は本の出版元の編集者と相談しながら、話を色々と膨らませる必要があり、色々な事例や話の本筋とは関係ない脱線を挟む必要があるということだ。
自分が出版する側に立ったときをイメージしてほしい。本を手に取って立ち読みしてくれている人に、買おうと思ってもらうためにはどうすればいいか。その答えは、その本で本当に重要なエッセンスを惜しみなく前半の最初のほうに書くということだ。役立ちそうなことを前半の最初の方に書いておけば、立ち読みした人は後半にも同じくらい中身のある話があると思って買ってくれるということだ。
裏を返せば、ビジネス書の後半というのは、著者のマイルールとか独自哲学が展開されることが極めて多い。経営のハウツー本であれば、後半は著者の経営哲学などが書かれていることが多いということだ。もちろん、その著者のファンで独自哲学を読みたいのであれば、買って読めばいいと思う。しかし、多くの人にとって、他人の独自哲学というのは役に立たない。同じ人間ではないし、同じ経験もしていないのだから、あたりまえだ。
では、どう読めばいいのか。
- 目次を読んで全体構成と要点を想像する
- ページごとの表題や黒字となっている部分だけしっかり読む
- 後半で著者の独自哲学が展開され始めたら読むのをやめる
これだけで十分である。だいたい200ページの本は、3~7分くらいで読める。
ビジネス書は多読して学ぶに限る
ビジネス書というのは、一般人向けということもあって、著者が本当に伝えたかった大事なエッセンスのページ数はそこまで多くなく、ほとんどのページがそれを補足するために手を変え品を変えて一般論を料理している。もちろん、世の中の名著には、全てのページに精読する価値があるというものもあるが、ほとんどのビジネス書は前半部分を斜め読みで十分である。
ビジネス書というのは、同じような内容の本が溢れているため、一冊を精読するのではなく、複数の本を多読するに限る。ビジネス書を手に取る人は、心の悩みを抱えた患者である。それに対してビジネス書というのは、患者に物理的な治療はできないが、心のケアをするカウンセラーに近い。そうであれば、一人のカウンセラーに相談するよりは、より多くのカウンセラーから様々なアドバイスをいただいたほうがいいと思うだろう。