【書評】チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る【地球温暖化、氷河期、二酸化炭素】

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この本は、すごく面白い。

地球温暖化について気になっている人に読んでほしいです。気候変動に関する研究者たちのドラマを交えながら、気候変動について網羅的な見地で分かりやすく解説してくれる良書です。

難しい計算式なども多少出てきますが、そうしたところは飛ばし読んでも内容は分かりますので、普通の人でも大丈夫です。それでは、要約と感想を書いていきます。

地球温暖化は国の存亡にかかわる大きな問題

まず、2007年のIPCCの第四次報告書にあるグローバルでの気候変動を示したグラフがこちらです。これまで1000年以上に渡って一貫して気温のレンジが一定していたにも関わらず、1970年代半ばを境に地球の気温が実際に急速な温暖化に転じているのが分かります。

もともと、1950年くらいから1970年くらいにかけては、地球全体ではやや寒冷化の傾向がありました。ところが、1970年半ばから徐々に暖かくなっていきます。コロンビア大学のブロッカーは、断片的な証拠を線でつなぎ、二酸化炭素による地球温暖化を指摘します。

そして、19世紀末にスウェーデンのアレニウスが、大気中の二酸化炭素の増加が地球の温暖化を引き起こすことを定量的に予測したことで大きく地球温暖化の研究は進展します。その後は様々な研究者の努力の結果、産業革命が起きる1700年代中頃から2000年頃に至るまで、二酸化炭素濃度は280ppmから367ppmから増加していることが明らかになり、大気に二酸化炭素が増えることによって温室効果が強くなっていることが明らかになります。

この地球温暖化によって、将来、数十センチから1メートルという海面上昇の可能性があり、それによって海面に面した都市はやられ、国の存亡がかかる島国さえあり、全世界で1憶人以上が被害を受ける可能性があります。

地球は氷河期と間氷期を10万年単位で繰り返している(ミランコビッチ・サイクル)

地球温暖化が進んでいるものの、地球環境の変化というのは、実は20年や30年といった短い期間で考えていても真実は見えてきません。

では、数百万年といったような長期的なスパンで、地球の気候変動はどのようになっているのでしょうか。

1920~1930年代に、セルビアのミランコビッチが、地球の離心率の周期的変化、地軸の傾きの周期的変化、自転軸の歳差運動の三つの要素から、地球は氷期と間氷期という2つの気候状況を周期的に繰り返しているという仮説を立てます。

地球の自転や公転といった要素が、地球上に降り注ぐ日射の総量や分布を変えてきたため、およそ10万年ごとに地球全体が氷河期になったり間氷期になったりするというものです。

ミランコビッチ・サイクル

それを裏付けたのが、1955年に出したエミリアーニの論文です。有孔虫というプランクトンの化石から、海底コアの酸素同位体比を分析することで、少なくとも四回分の氷期と間氷期が地球にあったことを証明しました。(余談ですが、沖縄の星の砂は、実は有孔虫の殻です)

この他にも、様々な研究結果が間氷期と氷河期のサイクルを支持しています。グリーンランドで採掘されたアイスコアの酸素同位対比から氷河期と間氷期の移り変わる過程が分かります。

ミランコビッチ・サイクルによれば、現在の地球環境は間氷期にあたり、およそ10万年前から1万年前までが氷河期だったということが分かります。

地球温暖化は現代人の火遊び。「氷期」と「間氷期」以外の解は存在しないとはいえない

ここで疑問が生まれます。冒頭にあるように、1970年頃から地球温暖化が進んでいるという事実と、今後数万年後には氷河期が訪れるという事実をどう考えればよいのかということです。

ミランコビッチ・サイクルで考えれば、およそ40万年前の間氷期は、離心率などが現在の条件に比較的似ていることが分かっています。そちらを参考にすると、間氷期がおよそ三万年にわたって続く可能性が高いため、私たちの地球はあと一万年ほど間氷期が続いてくれるという計算になります。氷河期が訪れてしまうと海面がおよそ140メートルも下がり、地球の平均気温は八℃下がって巨大な氷床ができ、ヨーロッパやカナダ・アメリカの北方が氷で包まれることになってしまいますが、少なくとも一万年の猶予があるということになります。

一方で、冒頭の地球の平均気温が示すとおり、1970年あたりから化石燃料などを大量に使った経済の発展により、大気中の二酸化炭素が増加し、急激に地球温暖化が進んでいるという事実もあります。

この本には、明確にその答えが載っているわけではありません。なぜなら、それは未だに研究対象だからです。この本の最後は以下のように書かれています。

「地球の気候の方程式に「氷期」と「間氷期」以外の解は存在しない」などと、いったい誰が確信をもって言えるだろうか?人類が危険な火遊びをしていることは間違いないのである。

世界全体が地球温暖化に足並みを揃えて立ち向かわなければならない

人間はこの火遊びを止めることができるのでしょうか。

人間のこの地球温暖化という火遊びによって、破壊的な温暖化が訪れたり、氷河期が来るのが早まったりする可能性だってあります。一万年後に氷河期がくるだけと安心していることはできません。

トランプ大統領からバイデン大統領に代わり、アメリカがパリ協定に戻ったことは大きな一歩です。しかし、経済成長が安定化し、地球の利益を享受している先進国と、これからようやく発展していこうとする途上国との間で、二酸化炭素の使用量を制限する方向で容易に合意できるとは思えません。

こちらの記事にも書いたとおり、地球環境に優しい再生可能エネルギーなどが経済的なコストを伴って現れるか、世界が足並みを揃えて二酸化炭素などの使用に規制をかけていくしかありません。

この本は、本当に示唆に富むことが多く書かれていますので、是非、皆さんも読んでみてください!