【簡単に始められるミニマリズム】引き算の美学【不安と孤独を感じやすくなった現代への処方箋】

Photo by Bench Accounting on Unsplash

ここ数年、断捨離やこんまりさんの片づけ(こちらの記事で詳しく紹介)をはじめとして、モノを捨てて本当の自分に気づくというカルチャーが流行っています。

ミニマリストなども登場し、ほとんどモノを持っていない生活スタイルがテレビや雑誌で紹介され、話題になったりもしています。

たしかに、最近よく聞くよね。服は3着しかもってないとか。やりすぎじゃないかと思うけど・・・

こうしたブームというのは、その時々の世相によって生み出されています。なぜ今、こうしたミニマリズムがブームなのか、今日はそれを解説していきたいと思います。

不安と孤独を感じやすくなった現代

Photo by mauro mora on Unsplash

皆さん、ここ最近、メンタルが一段と疲れやすくなったと思いませんか。

ひと昔前まで、日本ではある種の王道パターンというものがありました。それは、地域や会社にしっかりと根付いて、定年や死ぬまでそのコミュニティで生きていくというものです。

それが2つの要因で変わってきているのです。

1つは終身雇用が無くなったことです。バブル崩壊により、それまでの経済成長から一変して景気が低迷し、会社で年次が上がっても給料が増えない、定年まで雇用が保証されないといった「会社で一生安泰」という保証が奪われたことです。

会社に所属することが一つのアイデンティティであった時代は終わりを告げ、人は従来よりも圧倒的に不安を感じるようになったのです。

もう1つはインターネットの普及です。インターネットは、情報の非対称性の格差を無くすだけでなく、SNSなどを通して好きなモノにだけに囲まれる手段を与えました。しかしその一方で、表面的なコミュニケーションを爆発的に増やし、リアルのコミュニケーションを減らしていったのです。

地域や会社といったリアルなコミュニティでの人付き合いが減り、人々は守られているという感覚がなくなり、強い孤独を感じるようになったのです。

帰属的欲求から本能的欲求に切り替える

では、こうした不安や孤独を埋めるためには、どうすればよいでしょうか。会社や地域に変わる帰属先を見つけるべきなのでしょうか。

端的にいえば、それは難しいです。世界的に見ても社会の流れは集団から個であり、帰属先は少なくなる一方でしょう。

ではどうすればよいか、その答えは、帰属的欲求から本能的欲求に切り替えていくということです。幸せの定義については、こちらの記事で解説したとおりですが、帰属的欲求に置いていた比重を本能的欲求に切り替えていくということです。そうすれば、個人としての強さを得て不安や孤独が消えていくということです。

帰属的欲求から本能的欲求に切り替えるためには、自分自身のことをもっとよく知って、自分が本質的に求めてることを理解する必要があります。

そのためのヒントになるのが、ミニマリズムの考え方です。

ミニマリズムとは何か→本当に必要なものを見つめ直すこと

ミニマリズムとは、簡単に言えば、自分に貼りついた余計なモノを捨てて、本当に必要なものを見つめ直すということです。

ミニマリズムは、完成度を追求するために、装飾的趣向を凝らすのではなく、むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイル。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ミニマリズムは最小限主義と訳されるように、その対象にとって本当に必要なモノを最低限にまで抑えることで、その本質的な美しさを見出すということです。

最近では、そこから転じて、人の生き方として、見栄や物欲を満たすだけの「無駄な」ものは捨てて、自分が本質的に必要で素敵だと思うものだけを残すという解釈になっています。

自分にとって本当に必要なものが分かれば、必然的に本能的欲求が高まっていき、これまでは何かに帰属することでしか消せなかった不安や孤独が消えていきます。

現代の人々は、基本、足し算の考え方です。手に入れた資産、地位といったものをどんどんと自分に加えていって、それをキープするために生きています。しかし、そうしたキープする対象は、本当に欲しかったものではなく、単なる付属品に過ぎません。それゆえ、楽しくないから、本能的欲求が満たされないのです。

ミニマリズムとは、引き算の美学であり、自分自身のアイデンティティを見つけ、そこに自分の時間を費やしていくということなのです。そうすれば、本能的欲求が満たされていくのです。

仏教の考え方にみられるミニマリズム

仏教の考え方というのは、実はミニマリズムに通じるものがあります。

仏教では、自己を中心とした考えと、それに基づく物事への執着から煩悩(欲、怒り、無知)が生まれるとしていますが、ミニマリズムでは物事への執着を捨て、自分が本質的に必要で素敵だと思うものだけを残すということですから、煩悩から解放されるための行為でもあるのです。

ミニマリズムの美しさは、彫刻に例えることができます。

彫刻というのは、絵画のように「何かを付け足していく」美しさではなく、もともとあったものを削って「何かを削ぎ落していく」美しさです。絵画よりも彫刻に惹かれる人というのは、この引き算の美学に惹かれる人なのかもしれません。

ミニマリズムの始め方

まず、自分が多くの時間を費やしているもの、つまり仕事、モノ、人間関係などで素敵だなと思わないもの、こんまり流に言えば、ときめかないものを選ぶのです。

ときめかない仕事、ときめかないモノ、ときめかない人間関係を整理してみましょう。

これらを捨てるといっているわけではありません。整理して、まずはときめかないということを自分で認識するということです。

新しいことへのチャレンジが怖いというだけで続けている仕事、他人への見栄だけでもっているモノ、承認欲求だけでやっているSNS、本当は嫌いだけど仲間外れになりたくないから仕方なく付き合っている人たち、こうしたときめかないものから、少しずつ距離を取って、最後はサヨナラするのです。

サヨナラの過程で、不安だったり、もったいないと思ったりすることはあるでしょう。しかし、このままときめかないものを持ち続けていけば、最終的に後悔するのは自分自身です。

これは経験談ですが、見栄や物欲を満たすだけの「無駄な」ものを捨て、自分が本質的に必要で素敵だと思うものを認識し、そこに時間を費やすことができる人生は最高です。

まずは、くだらない人付き合いや、こちらにも書きましたが他人の承認欲求が含まれた情報から自分を遠ざけてみてください。

幸せになるためには、本当に自分が好きな関心事と向き合い、他人の目を気にせずに生きることが重要です。

ミニマリズムとは、本当の幸せを手に入れる手段そのものなのです。