今日は、日本でDXが進まない理由について、日本独特の歩みを踏まえて語っていきたいと思います。
こちらの記事ですね。
今日は、日本の体質という本質的な問題をみていきます。それではさっそく行ってみましょう!
いまさら叫びだしたDX
コンサルティング業界にいると、どこに行ってもDX(デジタルトランスフォーメーション)が毎日のように謳われています。
名だたるクライアント企業においても、変化の激しいデジタル時代を生き抜くため、他社に先駆けてDXを進めようという意識が高まっています。
しかし、このムーブメントには違和感を覚える人が多いのではないでしょうか。
なぜなら、日本は、バブル崩壊の1990年以降から30年間、IT産業を重要視してこなかったからです。今になって声高くDXと叫ぶことに、とても今更感があります。
こういうと、ITとDXは別物なので今更とかではないという人もいますが、世界経済を牽引しているIT産業をみれば、情けない限りです。具体的で根幹的なテクノロジの側面においては、ITとDXを分けて考えるほうがセンスが無いというのはエンジニアであれば分かるでしょう。
日本はIT産業を重要視してこなかった
日本がIT産業を重要視してこなかったことが、バブル崩壊から脱却できなかった原因の一つになったことは明白です。
アメリカではクリントン政権時に科学技術による産業強化を公約したため、1990年以降にIT産業がGDPに占める割合が急増するとともに、IT産業が経済を牽引し、リーマンショックまで好景気が続きました。
マイクロソフトやアップルなどの強力なIT企業も育ち、現在は時価総額のほぼ上位はIT企業が独占するまでに至っています。時価総額というのは、株価であり、つまりは世の中の期待が反映されているものです。これからまだまだIT産業が世の中をひっぱっていくと思われているということです。
一方、日本では、IT産業は重要視されず、国際競争力のあるIT企業は一つも生まれず、一攫千金の勝ち筋を失い、そのまま失われた30年を作ってしまったのです。
ITの地位が低いのは、日本独特のSIerビジネスが原因
日本では、IT産業は重要視されなかったばかりか、どこか下請けのようなイメージが根付いています。
いまだにITのことをどこかで見下したような発言をする人が多いのも日本人の特徴です。コンサル業界においても、ITは下流であり、お金は稼げるけどどこかレベルの低いものと見られていました。
ITが下請けのようなイメージになったのは、SIerビジネスが原因です。SIerといわれる大手IT企業が、他社のシステム構築を請け負うというビジネスです。
実はあまり知られていませんが、SIerビジネスは日本独特なものであり、自社の大切なITを丸投げしてしまうような行為は、海外ではほとんど見られません。
たとえば、アメリカの企業は、自社のシステム構築は自前主義です。システムが競争力の源泉になることを分かっているため、一部はSIerに依頼することももちろんありますが、基本は自分たちで作るわけです。
日本のようにITシステム構築をSIerに丸投げしてしまうような文化だと、ITは下請け的なイメージになってしまい、見下され、地位が低いものになってしまうわけですが、アメリカは自前主義である分、ITというものの位置づけが高くなりますし、エンジニアの質も地位も高くなるというわけです。
Googleや Facebookのエンジニアを見れば分かるとおり、アメリカのエンジニアはハーバードなどの有名大学の博士号を取得したような人が多く、質も地位も給料も高いです。
それに比べて日本では、エンジニアに誰でもなれてしまうし、企業のIT部門などでは、およそエリートコースとはいえない人が集まっていたりします。
日本がDX人材不足になるのは当然
そんな日本で多くの企業が、いまになってDXしたいけどデジタル人材が不足といっているのはある意味滑稽なわけです。IT産業を重要視せず、見下し、IT構想からシステム構築までSIerに丸投げしてきたというツケが、いまになって訪れているにすぎません。
そして、DXの時代になっても、コンサルやSIerに丸投げしているのですから、日本の企業は何も変わらないでしょう。DX室を作っただけでやった気になったり、IT(つまりはテクノロジ)も理解していない人間にDXをリードさせたりしていては、アメリカや中国に勝てるわけがありません。アメリカや中国では、ゴリゴリにテクノロジーを理解した博士号のエンジニアたちがしのぎを削っているわけで、形ばかりの日本企業が勝てるわけがありません。
また、いくつかの有望なIT企業が出てきても、既存産業のディスラプターになろうとする彼らを日本人は袋叩きにしてしまいます。日本政府が行っている規制についても、既得権益を守るばかりで、こうした若いIT企業をサポートしようとしてきませんでした。それでは若い芽がでてくるわけがありません。
また、そもそも海外では、日本のように表層的でバズワードとしてのDXという言葉はほぼ聞きません。AIやXRといった技術に根差した話はしますが、概念だけで中身のないDXというワードは興味を持たれないのです。
日本人は学ぶ必要がある
日本は、緩やかな衰退の道を辿っているにもかかわらず、危機感もなく、平和ボケしているといえるでしょう。アメリカや中国に負けないくらいもっと必死に学ばなければならないのに、日本はまだ一流の国だと思っている日本人が多いです。
簡単に分かった気になるくせに、見下したり、自分の頭や時間を使って学ぼうとせず、人にやってもらおうとする、これが総じて日本人に言えることです。
DXが流行っているからといって、DXの検討と推進をコンサルやSIerに丸投げしたり、自らの意識を変えることさえチェンジマネジメントをやってほしいとコンサルに頼ろうとしているのが実態です。そもそもその発想がある時点で変われるわけがありません。
デジタル庁をつくっても、相変わらず既得権益を守ってばかりで、SIerに丸投げをし、技術力のあるエンジニアを育てず正当な給料も払わず、錦の御旗にふんぞり返っているようでは、今と何も変わらないでしょう。
日本のIT産業を保護主義的に守ろうとする人もいるでしょう。その発想は、ここまで説明してきたように、企業のIT丸投げ体質であったり、そこに甘んじて努力していないSIerであったり、技術力の高いエンジニアを育てずせっかく出てきた若い芽も規制で潰してきた日本の体質を理解できていないのでしょう。
せめて、このブログを読んでくれている人だけでも、スキルアップしてほしいので、引き続き情報を提供していきたいと思います。
DXとシステムの違いはこの前解説してたよね。