【書評】人を動かす デール・カーネギー【人の感情と関心に注意を払う方法論。世界の名著】

この本は、実に10年前に読んだ本ですが、人間関係の本質的な話が書かれているものとしては今でもこの本が一番だと思っています。

まずは著者のカーネギーは、現代の自己啓発分野を切り開いた偉人です。人間関係研究を目的とした「デール・カーネギー研究所」を設立して、世界中で講演をしてきた人です。

デール・ブレッケンリッジ・カーネギーは、アメリカの作家で教師にして、自己啓発、セールス、企業トレーニング、スピーチおよび対人スキルに関する各種コースの開発者。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

この本は1936年に発表されて以来、世界中で多くの人に読まれてきた不朽の名著であり、人間関係の本としては、この一冊で十分だと言われるくらいです。

内容としては、著者が丹念に集めた豊富なエピソードを交えながら、人が生きていく上で身につけるべき人間関係の原則が書かれています。

人間関係の攻略本にありがちな薄氷な根拠と偏見が充満したものとは異なり、カーネギーの深い人間愛とともに、きちんとしたエビデンスを基に作られた方法論となっています。

カーネギーの方法論:人の感情と関心に注意を払う

カーネギーの方法論は「人の感情と関心に注意を払う」に要約されると思います。まず、人間のそのものの性質として以下を説いています。

  • 人は、他のものと比べられないぐらい自分のことだけに関心がある
  • 人は、誰もが自尊心を持っており、けなされれば腹を立てる
  • 人は、論理の動物ではなく、感情の動物である
  • 人は、他人の意見によって自分の行動を変えるのを嫌がる
  • 人は、他人から認められたがっている

その上で、カーネギーが私たちにくれたアドバイスを3つに要約します。

直接的な表現は用いない

私たちは、相手と話をする上で、面倒であったり、相手が話を聞かないと思ったとき、どうしても直接的な表現を用いてしまいます。しかしながら、人はメンツを潰されたり、相手の意見によって自分の行動を変えることを嫌いますので、直接的な表現というのは、逆に事態を悪化されることも多いのです。

カーネギーは、人間関係において、直接的な表現は用いるべきではないといいます。その代わりに、注意したいときなどは、相手に気づかせるか、遠回しな表現を使うようにといいます。

余談ですが、ロシアのプーチン大統領も直接的な表現は用いるべきではないという趣旨のコメントをしていたことがあります。

議論をしない

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先程のお話と通じますが、人は相手の意見によって自分の行動を変えることを嫌いますので、議論をしても無駄になることが多いです。仮に議論で相手を打ち負かしても、相手は表面上は従うかもしれませんが、心の底では、あなたに仕返しするチャンスを伺っているでしょう。

カーネギーは議論をするのではなく、おだやかに話して議論を避けるようにと言います。その上で、相手の関心事を見抜き、相手にとって何が重要であるかを考え、そこに焦点を当ててコミュニケーションを取ることが大切だと説きます。

かつで幕末に活躍した坂本龍馬も議論をしないことで有名でした。

相手を蔑ろにしない

人は、自分が思っているよりも遥かに、人から大切にされたい、自分の話を聞いてもらいたいと思っています。それにも関わらず、相手を蔑ろにするような行動を取ってしまっては、大切な人間関係が壊れてしまうのは当たり前です。

カーネギーは、人間関係の基本は、相手の立場に立って、相手に重要感を与えることだと説きます。できる限り聞き手に回り、どんな些細なことでも相手の良い点に気づいて率直にほめることが大切だと説きます。

人は、自分に対して率直で良い評価を与えてくれる人を見下したりなどしないのです。

これはつまり傾聴力ということになりますが、詳しくはこちらの記事に書いています。

少し古い本ですが、月日が経っても色褪せない本というのは何かが違います。本当に良い本ですので、是非読んでみてください。