【資本家と庶民の格差】格差拡大を防ぐには、資産に対する課税強化が必要

現代の世界規模での問題は、「環境破壊」と「格差」です。

また小難しいこと言い出したなぁ~

これらは国連で持続可能な開発目標といわれるSDGsのテーマです。正確にはSDGsのテーマは17種類ありますが、よく見ればこの二つに集約されていることが分かります。

そして、こちらの記事に書いたとおり、この二つを解決するためには、まず世界各国が足並みを揃えて、SDGsに反する行為を共同で規制していくことが大切です。麻薬や核兵器と同じようにです。

今日は、そのうちの「格差」に焦点を当てて、格差を解消していくにはどのような規制が必要と考えられるのかを話します。ずばりいえば、資産税についてです。

資本家とそれ以外で広がる格差

格差社会の勝利者、つまり富裕層とはどういう人たちでしょうか。

年収2000万円以上のエリートサラリーマンや、医者などの士業でしょうか。それは違います。

本当の富裕層というのは、そもそも働いていません。彼らは、自らが労働をするのではなく、お金に働かせている人たちです。そう、つまり格差社会の勝利者とは資本家のことです。

資本家とは、株式に投資してキャピタルゲインを得たり、融資をして膨大な金利を得ることができる人たちです。

実は、アメリカでは、コロナによって多くの失業者が出る中、富裕層の資産は6570憶ドルも増えたという調査結果も出ています。

また、国際NGO「オックスファム」の2017年の調査では、世界で最も裕福な8人が保有する資産は、世界の人口のうち経済的に恵まれない下から半分にあたる約36億人が保有する資産とほぼ同じだったと報告しています。

フランスの経済学者、21世紀の資本を記述したトマ・ピケティは、資本主義の社会において、資本家とそれ以外の人々の格差は拡大し続けることを明らかにしており、これはしっかりしたエビデンスに基づく事実ということです。

『21世紀の資本』:資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、それだけ富は資本家へ蓄積される。そして、富が公平に再分配されないことによって、貧困が社会や経済の不安定を引き起こすということを主題としている。この格差を是正するために、累進課税の富裕税を、それも世界的に導入することを提案している。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

資産税よりも所得税の課税感が強い理由

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極めて一握りの人間が地球上の富の大半を支配している現状を、正当に評価された結果だとどうして言えるでしょうか。

資本主義のルールが完璧でないことはすでに明らかでしょう。

本来、ルールというのは、公平さを保つためのものです。格差を助長するものであるならば、見直す必要があります。

そこで、見直すべきルールとして誰もが思うのは税制です。つまり、資産家の財産に対して課税すればよいではないかということです。

資本家と普通の人の格差が広がり続けるのであれば、税制という観点からいえば、サラリーマンの所得ごときではなく、資産家が多く持つ資産への課税を強化することで、格差を正しく解消できるというのは明らかだからです。

しかし、現状、財産に対しては、不動産や自動車といった一部の資産に対してのみにしか課税することができていません。むしろ、私たちの社会は、資産よりも所得に対する課税感が強い国が一般的です。

なぜそうなるのでしょうか。

実は、国として資産税は把握しづらい一方で、所得は把握しやすいからというのが理由です。

そもそも国は、タンス預金のみならず、銀行の口座に入っている金額を国民ごとに正確に把握できていないというのが実情なのです。

そもそも、税には以下の三種類があります。

  1. 国民全員にほぼ一律でかかっていく税(消費税、住民税、等)
  2. 所得の大きさに比例する税(所得税、法人税、等)
  3. 資産の大きさに比例する税(固定資産税、自動車税、相続税、等)

これを見ても分かるとおり、③の資産系の税というのは、資産といわれるもののうち、ほんの一部のものにしか課税できていません。「等」の中にはキャピタルゲイン課税などがありますが、キャピタルゲイン課税は所得税と比べると20%程度ととても低く設定されています。

一方で、②の所得系の税は、しっかりと取れています。戦前から日本は、ドイツに倣って源泉徴収の仕組みを導入したため、所得を把握しやすい環境も整備できていたということです。

①の消費税はある意味公平ですが、これで格差を解消することはできません。

資産に対して正確に課税するために必要なこと

最近では、日本でもようやく、マイナンバーが導入され、国民の財産を把握するための基礎ができ始めています。

銀行預金や有価証券や不動産をマイナンバーと関連づけ、国民の資産を一元的に把握するという手法です。

また、合わせて、新札の発行も謳われていますが、これは旧札を使えなくすることで、タンス預金をあぶり出すという目的が実はあります。

このように、資産を正確に把握するために国は着実に動いています。

ただし、マイナンバーの運用が一部ぐだついているのも事実であり、まだまだこれからといった感も否めません。

なお、海外に資産を移してしまえばよいということを言う人がいますが、現在、OECDでは、そうした課税逃れへの対策を強化しています(海外の預金等についてはCRSという仕組みで国家間で情報共有が行われている)ので、それも困難になってきているといます。

資産税を導入したらお金持ちが外に出て行ってしまうと考える人もいますが、もともと支払っている税も少なく、いまの日本人にとって日本は住みやすい場所ですから、その理屈を考慮する必要はないでしょう。

これからは、世界レベルで、資産家への課税を強化し、格差を無くす取り組みが行えるようになっていくことを期待しています。