こんまりこと、近藤麻理恵さんの爆発的に売れた本を読みました。
この本は、単純に片づけの方法論を説いているものではなく、そこに哲学的な要素が組み込まれています。
もちろん、ときめくものだけを残すとか、収納は縦にしまうとか、片づけする順番は服などを最初に行って写真とかは後回しにするとか、色々な片づけのTipsは出てきますので、それはそれで非常に参考になります。
しかし、このブログで取り上げる以上、片づけのところにフォーカスするのではなく、この本に書かれたこんまりさんの哲学についてお話したいと思います。
この本はミニマリズムの精神が流れている
私は、この本の最もハイライトは、以下のところだと思っています。
自分の置かれている環境については、誰かと比べてすごいとか、ゴージャスだというわけではないけれど、少なくとも私にとっては、一つ残らず、本当に大好きで愛おしくて大切で、素晴らしいものに囲まれて生きているという自信と感謝の思いがあります。
そういう、自分がときめくモノたちや人たちに支えられている。だからこそ、自分はだいじょうぶ、と思えます。以前の私と同じように、他人に対して心を開くことができず、自分に自信がない人がいたら、持ちモノや部屋という身近に支えてくれている存在がいることに気づいてほしい。
(中略)
捨てられない原因を突き詰めていくと、じつは二つしかありません。それは「過去に対する執着」と「未来に対する不安」。この二つだけです。
(中略)
自分にとって必要なモノや求めているモノが見えていないから、ますます不必要なモノを増やしてしまい、物理的にも精神的にもどんどんいらないモノに埋もれていってしまいます。
では、「今、自分にとって必要なモノ」をはっきりさせるにはどうしたらよいのかというと、それはやっぱり不必要なモノを捨てていくことです。どこか遠くに探しに行ったり、新しく買いに行ったりする必要はありません。今、自分が持っているモノにていねいに向き合い、いらないモノを減らしていくだけでよいのです。
(中略)
あなたは「あなたが本当にときめくこと」に大いに時間と情熱を注いでください。それは、あなたの使命といってもいいかもしれません。
近藤麻理恵「人生がときめく片づけの魔法 改定版」
つまり、自分にとってときめかないモノは、自分の周りに置いていない、あっても感謝をもって捨てている、だからこそ、自分に自信が持てる。そして、自分にとって必要なモノがはっきりするので、自分が本当にときめくことに時間と情熱を集中できる、ということです。
実はこの考え方は、ミニマリズムの精神にもかなっています。
ミニマリズム (英: Minimalism)とは、完成度を追求するために、装飾的趣向を凝らすのではなく、むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイル。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
少し誤解ないように補足すると、ミニマリズムとは、自分が必要とするモノまで捨ててしまって、心もお金も極貧の中で最小限のモノだけでサバイブするということではありません。
色んな物が簡単に手に入る現代先進国においては、私たちは色々なモノに囲まれて生きています。しかし、色々なモノに囲まれることによって、逆に本当に必要なものが何なのか分からなくなり、様々なノイズが発生してしまっています。
このような中、自分が本当に欲しいモノを見極める手段として、本当に大事なものに集中しようというのがミニマリズムの精神なのですね。詳しくはこちらの記事に書いています。
そうすると、この本の「ときめくか、ときめかないか」という判断基準は、自分が本当に欲しいモノを見極める重要な方法論なわけです。
ここに、この本の画期的なところがあるんじゃないかと思っています。
Konmari, Sparkjoy はアメリカで市民権を得た
この本は、海を渡ってアメリカでも非常に売れていて、こんまりさんは遂に、2015年のTIME誌が選ぶ「世界でもっとも影響力のある100人」に選出されていました。
そして、Konmari や Sparkjoy (ときめく)という単語は、アメリカでは誰でも聞いたことがあるほどに有名になっています。
それは単純な片づけ方法論に留まらず、ミニマリズムという哲学的な要素が盛り込まれていて、かつ Sparkjoy という画期的な方法を世に送り出した点が評価されたのではないかと思います。
最近では、こんな記事がありました。
Uber Execs Konmari Their Org, Lay Off Employees That Do Not Spark Joy
「タクシー大手ウーバー社の幹部がときめかない社員を解雇して、自らの組織をコンマリしている」というものです。
こんまりさんのことをKonmari という動詞にするのはいかがなものかと思いますが、大手ニュースでこのように書かれるくらい、近藤麻理恵さんは革新的であったということです。
ムヒカ大統領の話とも通じるミニマリズム
唐突かもしれませんが、この近藤麻理恵さんの考え方は、ミニマリズムの文脈でムヒカ大統領の話とも関連するため、少し話を続けさせてください。
ウルグアイのムヒカ大統領とは、ブラジルで開催されたリオ会議で、SDGsを唱えながらも本質的な対応を行っていない各国に対して、経済の拡大に関する問題点を指摘し、そのスピーチが話題となってノーベル平和賞の候補にもなった方です。
簡単に言うと、SDGsとは持続可能な開発目標で、地球にいる人類が地球という大切な資源を持続可能にしつつ、発展していくためにはどうすればいいかということが根っこの問題点となって生まれた目標です。
先進国の人たちは、当然ながらこの考え方を表向きは支持しますが、一方で本質的な対応をすれば自分たちの経済が痛むため、中途半端に口ばっかりの対応をしていたのでした。
そのとき、ムヒカ大統領は、本当に持続可能な発展が今のままでできると思っているのか、中国の人やインドの人がアメリカと同じ消費社会になっても地球は持ちこたえられると本気で思っているのかとリオ会議で話し始めます。
そして、私たちが本当にやるべきことは、この大量消費を良しとする文化を改めることです、そのためには先進国の方々が率先して無駄な消費を抑えていただくしかないのです、皆さん協力してこの問題の本質的なことに対応しましょうと話されたのです。
アメリカだけでなく、この日本でも、私たちは何でも買える経済を手にすることができました。何でも買えてしまいますので、当然、本当に必要なモノだけでなく、無駄に色々と買ってしまい、その処分に困っているわけです。
こうした大量消費を抑えるということは、必要なモノを見極めて、ノイズとなるモノを増やさないというミニマリズムの精神に通じるわけです。
そして、このミニマリズムの精神とは、近藤麻理恵さんのこの「人生がときめく片づけの魔法 改訂版」に凝縮されているわけです。
皆さんも是非、この本を読んでみてください。とても勉強になりますよ。