コンサルのプレゼン資料作成:①ストーリーラインの作り方【背景→課題→施策→実行計画】

コンサルタントが行う資料作成の技術について、外資系コンサルティングファームで10年以上にわたってクライアントワークに従事している私が二回にわたって余すところなく公開していきます。

本日の第一回目は、資料作成を行う上で最も重要なストーリーラインの作り方です。

皆さん、仕事でパワーポイントを作成する際、コンサルタントのようにキレイな資料を作りたいと思うことはないでしょうか。私は何百本とパワーポイントで資料を作成してきましたが、当然ながら最初は下手でした。しかし、先輩方に教わりながら少しずつコツを覚えていくと、ある法則があることが分かりました。今日はそのコツをご紹介していきます。

ストーリーラインの基本は問題提起型

ストーリーライン作りとは、一言でいうと「相手が理解しやすいように順序立てて資料をまとめること」です。

ストーリーラインがしっかりしている資料というのは、資料の目次とスライドごとのリード文(メッセージ)を読むだけで、違和感なく頭に入ってきます。

ストーリーラインには、定型的な構成があります。

最もポピュラーなものは、問題提起型といわれる「背景」→「課題」→「施策案」→「実行計画」の流れです。この他にもストーリーラインとして提唱されているものがいくつかありますが、基本的には本質的要素に変わりはありませんので、この問題提起型を覚えておけば大丈夫です。

この「背景」→「課題」→「施策案」→「実行計画」というのは、単純にスライドを4つ作成するということではもちろんありません。

パワーポイントに記載されるストーリーの流れとして「背景」と「課題」と「施策案」と「実行計画」の順番を決して狂わせずに、ごちゃまぜにせずに分けて書くことを意識するということです。

背景を書くときのポイント

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それでは「背景」→「課題」→「施策案」→「実行計画」を書くときのポイントを具体例を交えながら1つずつ説明していきます。

まず「背景」では、相手が理解している状況を伝えます

たとえば、ある製品の市場シェアを上げるための企画書をマネジメント層に向けて書くとします。

「背景」では、マネジメント層にとっては既に知っていること(もしくは知らなかったとしても、違和感なく理解できること)を書きます。たとえば「現在、X製品の製造において、他社の後塵を拝しており、市場シェアは第4位となっている」というような書き方となります。

背景を書く際には、今回のテーマにとって必要なことは漏れなく盛り込んでおく必要があります。

たとえば、会社の中期経営計画や、部門目標などがあればそれを盛り込み、今回の企画書が組織の方向性に則しているということを伝え、企画書の重要性を説きます。

課題を書くときのポイント

「背景」で相手に状況を伝えましたので、相手の頭の中は次の「課題」を受け入れる準備が出来ていますので、スムーズに入っていくはずです。

先に言うと、ストーリーラインにおいて、最も大切なのは「課題」です。

なぜなら、「課題」の設定を間違えてしまったら、後ろの「施策案」が全く意味のないものになってしまうからです。

マッキンゼーの礎を築いたと言われているマービン・バウワーの有名な言葉として「多くの企業や人は、間違った問いに正しい答えを出している」というものがあります。これは「施策案」は「課題」に対しては正しいものになっているかもしれないが、肝心の「課題」自体が間違っているため、不毛な努力をしてしまっていることを嘆いた言葉です。

「課題」は、先程のたとえの続きであれば「市場シェアが4位となっている理由は、生産性の低さゆえの原価の高さ、デジタルを用いたマーケティング戦略の弱さによるもの。」といった形で伝えます。この具体例は、分かりやすいように単純化していますが、実際にはもっと分析した結果を記載します。

この結果を導き出すために行う、課題に対する仮説検証が最も大変なところです。なぜこの「課題」を解決する必要があるのか、仮説検証を踏まえながら事実に基づいて結論を出す必要があるからです。

仮設検証のやり方を少しだけ触れておきます。まず、先程の例であれば、市場シェアが4位となっている現状を様々な角度から現状分析し、そこからなぜシェアが上がっていかないのかの理由を仮説ベースで設定します。分析とは比較することなので、経年比較、他社・他業種比較、予実比較などを行っていきます。

そこから、その仮説が正しいのかをリサーチし、論拠を探していきます。リサーチした結果、仮説を立証する論拠が見つからなければ、仮説が間違っていたということになりますので、仮説を見直して、またリサーチという流れになります。

リサーチの手法についてはこちらの記事を参照ください。リサーチは、インターネット、専門書などの文献、人へのヒアリングなどを行っていきます。

ちなみに、論拠とは、端的に言えば数字のことです。論拠は事実でなければなりません。事実に基づいてロジカルに体系立てる方法はこちらの記事を参考にしてください。

施策案を書くときのポイント

「課題」を書いたことで、相手の頭の中は「こういう課題があるのか、ふむふむ、解決しなければならないがどうすればいいだろう」という状態になっていますので、次は「施策案」を伝えます。

たとえば先程までの例でいえば「製造過程における各工場での情報共有を図ることで、ラインの最適化を図り、X億円の効果を見込むことが可能。また、SNSによるマーケティングを行うことで、これまで弱かった20代、30代へのリーチを強化することが可能。」といったようなことを言いたい事としてまとめます。

気を付けるべき点は、単純に課題の裏返しを書くのではなく、一歩踏み込んだ分析をした結果から得られた施策案を書くということです。

施策案で問われるのは、実現性と費用対効果です。

せっかくの施策案であっても、まったく現実味のない案では意味がありません。他社でうまくいった事例であっても、企業特有の文化やお作法、事情によってはうまくいかないケースもあります。それゆえ、この施策案を打ち出すときには、この企業がその施策案を実行するときに懸念されることを論点として示し、どうやってそれらを円滑に推進するかを説明していきます。

次に、費用対効果を示します。当たり前ですが、投資する金額に対して、それ以上のリターンがなければ意味がありません。この効果を試算するというのは、必ずしも定量的には試算できないものもあるため、十分に注意して実施する必要があります。

実行計画を書くときのポイント

Michal JarmolukによるPixabayからの画像

そして最後に「実行計画」です。

これまでの背景、課題、施策案では、これから実施することの趣旨(なぜ)と内容(何を)が打ち出されましたので、さらに「実行計画」では、いつどこで誰がどのように実施するのかを明確にします。

具体的には、スケジュール化とタスクの詳細化、役割分担を明確にしていきます。このあたりは、けっこう誰でも書いたことがあるんじゃないでしょうか。

企画書によっては、施策案までで良いケースもありますので、「実行計画」は必要に応じて追記してください。

 

いかがでしたでしょうか。

今回はストーリーラインの基本についてお伝えしました。あくまでも、ストーリーの順番と概要をお伝えしたのみであり、内容の深みまでは言及しておりませんので、その点はご留意ください。

引き続き、スライドごとの情報整理の仕方をお伝えしていきます。

  第二回目:スライドの情報整理の仕方

最後に、コンサルタントとして資料作成方法を勉強する上でおススメの本をこちらで取り上げておきます。