【書評】ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代【現代で生き抜くための教科書】

今日は、あの著名なアダム・グラントの本を紹介します。

ギバー、テイカーの人だよね

「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」も有名ですね。

今日は、彼の本の中でも特に私が感銘を受けた「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」を紹介します。

この本は、これまで常識と思われていたことを覆し、新たな発見を教えてくれるとても面白い本なので、じっくり書評をしていきたいと思います。

自分のオリジナリティを磨く

まずは、どのようにオリジナルを磨いていくべきかについて、教えてくれます。

アイデアは、質よりも量を求めよう

オリジナルでいるためには、多くのアイデアを生み出すことが重要です。

ベートーヴェンは生涯で650曲、バッハは1000曲以上、ピカソは1800以上の絵画を作ったといわれています。アインシュタインも相対性理論を発表していますが、彼が出した248の出版物はほとんど見向きもされていません。

多くの人が成功しないのは、アイデアを多く出すことに専念しておらず、ちょっとのアイデアを完璧に磨きあげることに注力してしまっているからです。

アイデアが出ないときは放置しよう

アイデアというのは、あるテーマについて少しだけ考えた後に、意図的に放置して、また後で考えると元のアイデアに固執することなく意外な可能性にまで考えが及ぶようになるようです。

アイデアに煮詰まったら、一度放置をして、全く違う活動をしてみましょう

キング牧師のあの名文は、実はそのように放置されて、最後の最後に生まれたものなのです。

芸術に触れよう

オリジナリティを発揮するためには、出来る限り芸術を嗜むことが重要です。

その証拠に、ノーベル賞を取った科学者というのは、一般的な科学者と比べて、舞台芸術、文筆、美術などの芸術にかかわる割合が7倍~22倍も高かったというデータがあります。

おそらく芸術というのは、シナプスの結合を促進させ、新しいアイデアを生み出す原動力となるのでしょう。

他人の意見に振り回されないようにしよう

セグウェイは、一時期、とてももてはやされた企業であり、かのスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスも惚れ込んだ商品でしたが、まったくヒットすることがありませんでした。

これは、いくら偉大でイノベーティブな人であっても、専門外のことではトンチンカンな評価をしてしまうということです。

オリジナリティを正しく評価するためには、その道の専門家に見てもらうことが正しいのです。直感というのは自分の経験値が高い領域でのみ正しいのであり、どんなに特定の領域で高い専門性を持っている人でも、門外漢の分野では素人と変わらないということです。

オリジナルであり続けるための環境を整える

Photo by mauro mora on Unsplash

オリジナルでいるためには、自分の周りの環境を整えることが大切です。

周囲から尊敬を得よう

自分がオリジナルでいるためには、自分の意見が周囲から一定程度の理解を得られている環境が望ましいです。

ある集団が志向する意見から、どの程度逸脱してよいかを表すものに特殊性信用というものがあります。これが高ければ高いほど、周囲から逸脱したオリジナルな意見を発することが許容されます。

そしてこの特殊性信用の度合いは、周囲からの尊敬によって決まります。つまり、オリジナルでいるためには、周囲からの一定の尊敬を集めている必要があるということです。

理解してくれる上司を得よう

自分のオリジナルな意見が周囲で推進力を得るためには、上司からのサポートも重要です。

この場合、親しみやすい上司というのは、対立を避けるタイプであるため、いざというときにオリジナルな人を庇うことができず、引き下がってしまう傾向があります。

逆に、尖った意見を持っている上司の場合、組織から逸脱したオリジナルな意見を認める傾向にあるため、オリジナリティを発揮するためには、内容と同じくらい、誰に訴えかけるのかという点が重要となります。

同じ価値観と手段を持つ仲間を得よう

オリジナリティを発揮するためには、仲間を持っているとよいですが、単純に同じ価値観を持ってそうだからといって、良い仲間になるとは限りません。

良い仲間というのは、同じ価値観を持っているだけでなく、それを達成するための手段が同じである必要があるのです。

保守的な政党は、革新的な政党よりも、自分たちに一番似通っている政党を非難しがちです。これは、同じ価値観であっても手段が異なると、敵対意識を持つという人間の性を表しています。

そして、仲間を増やすためには、節度のある過激派になることが重要です。アイデアのもっとも核心的な部分は過激であることが多いため、そこをオブラートに包むことで、気軽に参加してくれる人を増やすことが重要です。

安定的な立ち位置を得よう

オリジナルな人というのは、わたしたちが思っているよりもずっと普通の人であり、リスクテイカーでは成功しないということをこの本は教えてくれます。

起業するときには、退路を断って企業に臨む人と、本業を続けながら副業的に始める人とでは、覚悟の差から前者が成功する可能性が高いように思えますが、実際には、後者のほうが失敗する確率が33%も低いというデータがあります。

リスクとは、人生のポートフォリオで管理するものです。安定的な仕事をしながら、リスクのあるオリジナルなことに取り組む方が、経済的にも感情的にも社会的にも、成功する確率が高いのです。

オリジナルであり続けるためのマインドセットを持つ

オリジナルを磨き、環境を整えたら、あとはタイミングです。

フェーズによって重視することを変化させよう

オリジナルな企業は、何を重視しているのかを解き明かすため、シリコンバレーの200ものベンチャー企業の創業者にインタビューが行われました。

その結果、①専門性を重視する企業、②有能な人材を重視する企業、③企業文化に溶け込むことを重視する企業では、③が最も上場する確率が高かったようです。なぜなら、技能やスター性をもつ人間はいずれ去っていくが、企業への思い入れは息が長いからです。

しかし、いざ上場すると、同じような意見を持つものだけを集めてしまう傾向がある③の企業は、多様性が失われてしまうことで、①や②と比べると成長スピードが落ちるようになるそうです。

このことから、企業がオリジナルであるためには、フェーズによって重視するポイントが変わってくるということです。

オリジナルを発揮するタイミングを見定めよう

何かを成し遂げるときに重要なのはタイミングです。

イノベーティブな領域において、商品を時代に先駆けてリリースしていた先発企業というのは、実際には失敗率が47%にも上ります。一方、そうした先発企業が失敗しながら踏み固めていった道を後から走る後発企業の失敗率はわずか8%となっています。

また、先発企業が生き残っても10%程度しか市場を占有するのみで、後発企業は28%の占有率を持つという結果が出ています。つまり、オリジナルであるということに、先発者である必要はないということです。

自分をブーストしよう

オリジナルとして、どんな荒波もしなやかに乗りこなすためには、自分自身を勇気づける方法を身につける必要があります。

その際、人には、防衛的悲観主義者と戦略的楽観主義があることを知っておくとよいでしょう。

防衛的悲観主義は、わざと悲観することで不安をモチベーションに変えることができます。そういう人は、自分に落ち着けといっても逆効果になるので、逆に、自分は興奮しているということを自覚することで、パフォーマンスを最大化することができます。

自分の負の感情は、上手に正の感情にすり替えていくことが荒波を乗りこなす上で役立ちます。