アメリカ大統領選挙にみる「国が分裂する」ということ

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アメリカ大統領選挙が終わりました。11月18日現在において、票集計が終わっていないところもありますが、バイデン候補が勝利したことは確実でしょう。

いやぁ、注目度の高い選挙だったよね!

今日は、先日のこちらの記事でも触れましたが、アメリカで今まさに続いている国家の分断の流れについて語っていきたいと思います。

国家の分断とは何か

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民主主義における国家の分断とは、国民同士の意見が真っ二つに分かれてしまうことです。

アメリカの場合でいえば、極論をいえばトランプ支持者は「世界融和は関係ない、生活を考えればアメリカ第一主義だ」であり、バイデン支持者は「アメリカのこれまでの価値観は変えない」ということです。

そして、そうなってしまった本質的な原因を探っていくと、国民の間に格差が広がり、いわゆる中流層が減ってしまい、高所得者層と低所得者層の二分化の構図が見えてきます。

つまり、グローバル化の波によってアメリカの白人を主体とした中下流層の仕事が中国などのアジアに流れてしまい、ここ数年でアメリカの中下流層は所得が全く増えず、裕福な層ばかりがグローバル化の恩恵を受けているということです。

トランプ支持者にとってみれば、バイデン支持者の言葉というのはとても偽善的に聞こえるのだと思います。「環境保護とか移民歓迎だとか言ってるが、結局、グローバル化でお前たちばかりが得をして、俺たちの生活は悪くなるばかりじゃないか」というのが、トランプ支持者の本質的な主張だと思います。

詳しくはこちらの記事で書いたとおり、不平等が増加しているということになります。アメリカは特に格差の拡大が顕著ですが、日本を含めて他の国でも同様です。

国家を1つにする必要性

国家を1つにする必要性は、民主主義を守るため、これに尽きます。

なぜなら、国家が分断されていくと、内戦が起きて国が2つに分かれるところまで行かずとも、どちらかの主張がもう片方の主張を抑え込まなければ国を1つに保っていられなくなるからです

民主主義の基本は、多様な意見を持って話し合い、落としどころを作っていくということです。

イギリスの元首相テレーザ・メイが辞任の挨拶で述べたように、偉大な人道家であるニコラス・ウィントン卿の言葉に以下のようなものがあります。

Never forget that compromise is not dirty word, life depends on compromise.

妥協を決して汚い言葉だと思うな。私たちの人生はその妥協にかかっているからだ。

妥協とは、民主主義そのものの価値観です。

国民同士が忍耐強く話し合わず、勝者総取りで誰かが誰かの価値観を押さえつけるようなことになれば、民主主義は失われ、全体主義が台頭してくることになります。全体主義は国家を超えて、その他の国や地域を支配しようとするエネルギーを生むことは明らかです。

超大国において、マスメディアを公然とけなしたり、移民を悪者にするような発言をしたり、国民の分断を煽る行為というものは、世界平和にとって著しい脅威になるのです。

今回、バイデンが勝利したことは、民主主義を保つ上できっと重要な出来事であったでしょう。

しかし、格差という根本原因が解決しない限り、これからも分断の危機は続くのです。

国家を1つにするためには格差解消しかない

国家を1つにするためには、格差を無くす、これしかありません。

いまのアメリカでいえば、中間層の復興を目指すしかありません。バイデン次期大統領は、勝利演説において「私が大統領を目指したのは、アメリカの魂を取り戻すためです。この国の屋台骨である中間層を立て直し、世界中で再びアメリカが尊敬されるようにするためです。」と言いましたが、これはとても理にかなった考え方です。

そのためには、アメリカは、CEOなどの異常な高収入、資産家にとって有利な税制などを抑えつつ、中間層の雇用を戻さなければなりません。しかし、政府というのは、通常、お金を持っている人間の影響力が強いものです。お金を持っている人たちの影響力を抑え、中間層の復興を行うというのは、非常に手のかかる作業になることでしょう。

また、中間層を増やしていくことによって、アメリカを支える経済競争力が損なわれる可能性もあります。我々はいつでも、何かを捨てて何かを選ばなければならないのです。