
今日は、デジタルトランスフォーメーション(通称、DX)について、初心者にも分かりやすいように解説していきます。
デジタルトランスフォーメーションという言葉は、テクノロジに関係する人のみならず、ビジネスパーソンではあらゆるところでバズワードのように耳にすると思います。
今日は、「デジタルトランスフォーメーションってそもそも何なの?」「システム化と何が違うの?」「何が難しいの?」といった声に答えていきたいと思います。
デジタルトランスフォーメーションという言葉の定義
デジタルトランスフォーメーションの定義は、IDC Japanによると以下のようになっています。
企業が第3のプラットフォーム技術(クラウド・ビッグデータアナリティクス・ソーシャル技術・モビリティ)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
この表現は難しいでしょうか。難しいと感じる方には、「新しいテクノロジとデータを起点として新サービスを作ること」という理解でよいと思います。
なぜいま、デジタルトランスフォーメーションなのか

データの重要性については、インターネットが本格普及して以降、もう20年以上前からずっと叫ばれており、あらゆる企業で状況の可視化というキーワードをもとにBI(ビジネスインテリジェンス)の導入なども進んできましたが、画期的な新サービスを生み出せるまでには至らなかったというのが実情と思います。
しかし、iPhoneの登場以降、ここ数年でモバイルが急速に普及し、多くの一般人が手の中にパソコンを持つことで、これまでは取れなかったデータが爆発的に取れるようになりました。
IDCの調査によると世界のデータ量は、2013年時点で4.4ゼタバイト(4.4兆ギガバイト)であったのに対し、2020年時点ではその10倍の44ゼタバイトになり、2025年時点では175ゼタバイトになると予想されています。
加えて、通信回線の高速化やAIの登場によって新サービスが生まれ、既存のビジネスモデルがディスラプトされ始めたことで、デジタルトランスフォーメーションが注目されだしたのです。
モバイル起点の新サービス
モバイルの登場により生まれた新サービスで既存の業界をデジタルディスラプトした例はこちらです。
- UberやAirbnbといったシェアリングエコノミーサービス(既存のタクシー業界やホテル業界のデジタルディスラプト)
- TwitterやFacebookといったSNSサービス(既存の新聞や雑誌やTVといったマスメディアのデジタルディスラプト)
通信回線起点の新サービス
ハードウェアや通信回線の高速化・価格低減、それに伴うクラウド化によって生まれた新サービスで既存の業界をデジタルディスラプトした例はこちらです。
- Spotifyの音楽サブスクリプションサービス(既存の音楽業界によるCD販売をデジタルディスラプト)
- YouTube、Netflixといった映像ストリーミングサービス(既存のテレビ業界のデジタルディスラプト)
AI起点の新サービス
AIの台頭によって生まれた新サービスで既存の業界をデジタルディスラプトした例はこちらです。
- Google、Facebookによる行動ターゲティング広告(既存のメディア広告をデジタルディスラプト)
- Amazonによる商品レコメンドサービス(既存の小売業界のデジタルディスラプト)
デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスではもう少し広義の意味で使われている

デジタルトランスフォーメーションでは、上記で挙げたような新サービスが既存の業界をデジタルディスラプトする例がよく言われます。
しかし、こうしたデジタルディスラプトになるような新サービスを生み出すのは、いかにデータや最新技術を活用してもなかなか難しいのが現状です。
そこで、デジタルトランスフォーメーションについては、こうした新サービスに限らず、データや最新技術を活用して顧客ロイヤリティ向上や業務効率化を行う場合にも使われるようになりました。
顧客ロイヤリティ向上:SNSを活用したデジタルマーケティングなど
業務効率化:IoTを使った工場の効率化やAIチャットボットやRPAを使ったバックオフィス効率化など
そして、顧客ロイヤリティ向上や業務効率化の方が、普通の企業によって取り組みやすいのです。
よって、普通のビジネスシーンでは、新サービスを生み出すという意気込みだけでデジタルトランスフォーメーションを始めても上手くいきません。もう少し取り掛かりやすい顧客ロイヤリティ向上や業務効率化という視点で取り組めるところを探していくほうがよいです。
いずれにせよ、インターネットが急速に普及した当時と同様に、新しく台頭してきたテクノロジ(モバイルやクラウドやAI)を取り込んでいくことは、企業が生き延びる上で必要なことです。政府が2025年問題と言ったから始めるとかそういうことではありません。
デジタルトランスフォーメーションと単なるシステム化の違い

この点は、以前、こちらの記事にも書きましたが、あらためて下記表をご覧ください。
デジタル | システム | |
技術 | AI/IoT/モバイル/クラウド/ウェラブル | 基幹系システム |
取組 | 新しいビジネスモデルの創出が主軸 | 既存のビジネスモデルの効率化 |
思想 | 戦略の上位的位置づけ | 戦略や業務を支えるもの |
上記のデジタルは、デジタルトランスフォーメーションと読み替えてください。
システムの方から説明しましょう。システムは、組織としての戦略があり、それを実現するための業務があって、最後に業務を効率化するためのシステムがあるという考え方です。
一方、デジタルトランスフォーメーションは、既存のビジネスモデルを下支えするために存在する技術としてではなく、モバイルやクラウドやAIといった新しいテクノロジを使って、データドリブンで戦略を一から練り上げるという考え方です。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違い
デジタルトランスフォーメーションとシステムの違いについて、別の言葉で説明すると、システムはデジタイゼーション、デジタルトランスフォーメーションはデジタライゼーションと言い換えることができます。
デジタイゼーション
デジタイゼーションとは、アナログをシステム化することです。
たとえば、アナログ時計からデジタル時計への変化は、デジタイゼーションです。また、フィルムカメラからデジタルカメラに変わることもデジタイゼーションです。
写真を撮るという本質的な機能は変わらずにシステム化することがデジタイゼーションです。
また、これまで手作業で行っていたような業務がERPなどのシステムに置き換わってきたこともデジタイゼーションといえます。
デジタライゼーション
デジタライゼーションとは、システムによって集まったデータをもとにデジタルトランスフォーメーションをすることです。
デジタル時計からスマートウォッチへの変化は、デジタライゼーションとなります。これまではただのデジタル表示しかできなかった時計から、脈拍や血圧を計るようにして、健康を後押しするようなビジネスを生み出しました。
その他、自動車をインターネットに繋ぐことで位置情報を把握してUberのようなビジネスを作ったりと、先程のデジタルトランスフォーメーションの例がそのままデジタライゼーションの例となります。
デジタルトランスフォーメーションにおいて企業が抱える課題

そして、いざデジタルトランスフォーメーションといっても、なかなか進まないのが実情です。
そもそもシステム化(デジタイゼーション)ができていない
デジタイゼーションが十分に行われていない(アナログな作業が多分に残っている)企業では、流行りに任せてデジタルトランスフォーメーションと声高に言っても、大概は単なるデジタイゼーション(システム化)を言及しているだけであったり、システム化が不十分なので必要なデータが取れないということであったりします。
デジタルトランスフォーメーションごっこに留まる
経営層からの指示で担当者がアサインされ、デジタルトランスフォーメーションのための組織まで作った、でも何やればいいか分からないという状況はよくあります。
その結果、なんとなく社内でアイデアを集めたり、スタートアップ企業にお金を払ってAIを使ったPoCを実施したりと、やった気になって成果は出ないということもあります。
部門間の壁によって頓挫する
デジタルトランスフォーメーションは、多くの部門が絡んで推進する必要があります。
- 企画部:事業計画との整合や影響の調整
- システム部:新システム開発、既存システムとの連携
- マーケティング部:顧客エンゲージメントの観点でのデジタル活用
- 営業部:顧客データの取得
- 管理部:投資・財務計画、人材育成
- (DX部※もしあれば):全体計画、部門間調整
どの部もデジタルトランスフォーメーションを推進すること自体を否定しませんが、自らが主体的になって他部門と調整したり、自分たちの業務プロセスを変えることに対しては否定的になるケースが多いです。
デジタルトランスフォーメーションを成功するために必要なこと

上記のような課題を解決するためには、経営層によるコミットメントと、ビジネスとテクノロジの両輪を理解した人材の確保が必要です。
経営層によるコミットメント
まず、デジタルトランスフォーメーションを特別なこととして捉える必要はなく、インターネットが急激に普及したときと同様に、経営トップが新たなテクノロジを活用していく姿勢を保ち続けるということです。
そのためには、新たなテクノロジの知見を自らが勉強して考えていくことが第一です。担当者に丸投げしていては絶対に知識は蓄積できませんし、心からのコミットは生まれません。
こちらの記事でも記載したように、交渉ごとと同じで、物事というのは自分がかけたコストだけ思い入れが強くなるものなのです。つまり、経営トップが自らデジタルトランスフォーメーションに向けて労力を投じれば、それだけ経営トップがデジタルトランスフォーメーションにコミットするということです。
経営トップが強いコミットを出せば、部門間の壁によって頓挫することもありません。
ビジネスとテクノロジの両輪を理解した人材の確保
経営トップがコミットできれば、次はビジネスとテクノロジの両輪を理解した人材にリードさせることです。
経営トップがそのままリードしてもよいですが、大きな組織ではそれも難しいでしょう。ゆえにデジタルトランスフォーメーションにおける右腕として活躍する人材を抜擢することです。
単純に、CDOを立てればよいということではありません。ビジネスとテクノロジの両輪を理解していることは当然として、さらにイノベーションのジレンマに陥らず、デジタルトランスフォーメーションの本質を追求できる人材にリードさせるということです。その上で、調整能力にも長けていなければなりません。
いかがでしたでしょうか。デジタルトランスフォーメーションに関する皆さんの理解向上に役立てば幸いです。
デジタルってバズワードがまた出てきた程度にしか思ってなかったわ~