【2021年度】コンサル会社はなぜ、新卒を採用するのか【専門知識よりコアスキルを期待】

コンサルティング業界の七不思議?の一つとして、なぜ新卒が、専門性を売りにしているはずのコンサルタントになれるのかという点があります。

わかる!

だってこの前まで学生だったのに、何の専門性もないもんね、ふしぎ。

今日は、こうした疑問をお持ちの人、特にコンサルに仕事を依頼するクライアントサイドの方、そしてこれから就職活動でコンサルタントを目指そうと思っている方々に、なぜ新卒を採用するのかをご説明します。

一般的に考えられているコンサルタントの価値

そもそもコンサルティングというのは、消費者向けのサービスではなく、企業向けのサービス(BtoBビジネス)です。

それゆえに、一般の人にはコンサルという仕事が何なのか、ほとんど理解されていません

たとえば車や食品のメーカーといったBtoCの企業であれば、一般の消費者にも馴染みは深いと思います。しかし、BtoBの企業というのは(さらにコンサルという目に見えない無形のサービスを売っている企業というのは)、普段の人にとっては、良く分からない存在なのです。

ですから、一般の人は、コンサルタントというワードから仕事を推測するしかありません。コンサルト(相談する)という英語からすれば、コンサルの価値は専門知識と考えるのは当然なのかもしれません。

コンサルタントの価値①専門知識

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では、その専門知識について見て行きましょう。専門知識には大きく2つあります。

まずは、自動車業界、金融業界、小売業界といった業界ごとの市場やトレンドといった業界固有の知識です。

これは、自動車業界のコンサルティングを行うなら、当然、自動車業界のトレンドであったり、商流であったり、経営構造であったり、業界全体が抱える課題について理解しており、それらを踏まえてクライアントへの提言が行える必要があるということです。

もう1つは、マーケティング、サプライチェーン、人事、会計といったソリューション知識です。

これらは、業界固有の知見ではなく、企業に横断的に通用する知見です。もちろん、業界ごとに少しは特徴があるかもしれませんが、基本的に、マーケティング、サプライチェーン、人事、会計、AI等のテクノロジなどは、どの企業にも横断的に通用する知見です。こうしたソリューション知識をもって企業の人事や会計に提言を行っていくということです。

そして、一般的に、この専用知識こそが、コンサルタントを雇う理由と思われています。

ただし、専門知識というのは、情報の非対称性(クライアントとコンサルタントとの知識の差)を使った売り物です。2000年以降の情報化社会の現代においては、ググればある程度の情報が集まってしまいますので、コンサルティング会社も専門知識だけで稼ぐのは難しくなっています。

コンサルタントの価値②コアスキル

実は、コンサルタントの価値には、専門知識の他に、思考力や実行力といったコアスキルというものがあります。

コアスキルとは、具体的には、思考力(ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、目的思考、等)と、人間力(リーダーシップ、チームビルディング、交渉力、等)に分けられます。

そして、コアスキルは課題解決においてもっとも必要なスキルです。

クライアントの課題やニーズを分析し、何をすればよいのかといった対応施策を作り、それをクライアントの経営層や色々な部署の方に納得してもらうためには、専門知識だけでは足りません。

知識はたくさん持っているのに、課題を解決するとなると役立てない人を思い浮かべてみてください。枝葉に囚われて本質的な課題が見抜けない人、課題提起ばかりで解決策を考えることができない人、物事を感情的に捉えて、論理的に構造的に考えることができない人、解決策は考えれるけれども、それを人に説明して説得することができない人、衝突を恐れて交渉することができない人、一人で作業することはできるけれども人を引っ張っていくことができない人、などなど。

こうした人に必要なものが、コアスキルです。さらに詳しいことはこちらの記事に詳しく書いていますが、とにかく専門知識だけでは十分なコンサルティングは行えないため、コンサルタントにはコアスキルが必要なのです。

新卒コンサルタントに期待すること

ここまでくるともう分かったかと思いますが、コンサルティング会社が、学校から出たばかりで何の専門知識も持ち合わせていない新卒を採用する理由は、このコアスキルに期待しているからです。

実は、このコアスキルというのは、若ければ若いほど身につきやすいのです。30代になってくると、ビジネスの現場での思考の癖というものがある程度できてきてしまうため、20代の若い頃よりもコアスキルを身につけることが大変になってきます。40代ともなれば、もはやゼロからコアスキルを身につけるというのは、よほどの覚悟がなければ難しくなります。

そのため、コンサルティング会社は、高学歴でコアスキルを身につける素養のありそうな若い新卒を採用して育てるのです。30代や40代でいかに専門知識があったとしても、コアスキルのない人は、コンサルティングの現場で役に立たないということを知っているのです。

また、大学で何かの学業を専攻していたので、新卒にも何かしらの専門性があると考える人がいますが、これは少し間違っています。なぜなら、大学・大学院での勉強というものは、そのまま研究者になる場合には役立ちますが、コンサルタントとしてビジネスの現場で使うには、ほとんど役に立たないからです。

コンサルティング会社では、新卒を育てます。議事録一つとっても精度を非常に求められますので、コアスキルも数か月で徐々に身についてきて、一年も経てば、一定の戦力になります。