
日本の労働生産性が低いというのは、皆さんもよく聞いたことがあると思います。具体的には、OECD加盟国の調査結果を見れば分かりますが、36か国中のほぼ真ん中、そして、先進国の中に限っては最下位という結果になっています。
本日は、その理由について考え、自分なりの答えを出したいと思います。
日本の労働生産性は先進国の中で最下位

まず、OECDでの労働生産性のスコアについてですが、2018年の数値ではアメリカやドイツの3分の2、イタリアの5分の4といった感じです。(一応、韓国は日本よりも低い)
また、1970年からデータがあるので過去も見てみると、日本は約50年に渡って、ずっと先進国の中で同じような立ち位置であることが分かります。(バブル期は少しだけ良かったようですが、それでも他の先進国よりもスコアが高かったわけではありません)。
この結果については、色々な経済評論家の方々によって様々な考察が行われています。
たとえば、日本の国民性からお互いの感情面に配慮しすぎて合理的な対応を行ってこなかったからだとか、もともと生産性の高い業種であった製造業が海外に生産拠点を移してしまったからだとか、考察は色々です。
私はもっと現場感覚に近い観点で考えていきたいと思います。
結論から言うと、私が考える日本の労働生産性が低い理由は、①過剰品質と②重すぎる管理の2つだと思っています。
日本の過剰品質
まず、過剰品質については、日本にいると当たり前になっているので、あまりピンと来ない人も多いと思います。
しかし、海外に一度でも行ったことがある人は、海外でのあらゆるサービスは日本のオモテナシと言われる高品質なものとは程遠いことを経験しているはずです。
日本だとホテルやコンビニやレストランなど、どこに行っても従業員の対応はとても良いですが、それに比べて海外だと従業員の対応が雑だと感じることは多いはずです。
また、日本にはサービス残業というのが未だに存在していますが、海外だとあり得ないことです。
サービス残業というのは、報酬ももらえずに自分の労働時間を削っているわけですから、雇用主以外は得をせず、日本としては労働生産性を下げて過剰品質を作っているだけなのです。
お客さん側の意識にも問題があります。日本のお客さんは、日本の企業から安い費用で高い品質を得ることに慣れすぎてしまっています。
海外からは、オモテナシという表現で絶賛されていますが、私たちはそれに喜んではいられないのです。むしろ、それと引き換えに労働生産性が低がっているのですから、本来は改善すべきものなのです。
労働生産性が低いということは、私たちは時間単価が他の先進国と比べて低いということです。もっとかみ砕いて言えば、同じ時間だけ働いても、アメリカの3分の2にしか所得を得られていないということなのです。
日本の重すぎる管理
労働生産性が低いもう一つの理由は、重すぎる管理です。
これまでの日本は、年功序列がしっかりとしていたこともあり、ある程度年次のいったオジサンたちが、20代、30代の若者の作業を管理監督するという仕事の仕組みを長年に渡って確立してきました。
数十年前までは、オジサンたちよりも若者のほうが人数が多かったので、そういう働き方でもバランスは良かったわけです。
しかし、現在は、逆ピラミッド型の人口構成です。そうなると、現在においても昔と同様に、オジサンが管理監督を行い、若者が実務をこなすというスタイルだと、管理監督に従事する割合のほうが高くなってしまうわけです。
本来は、オジサンたちも実務をこなす割合を増やさなければ、バランスが悪いのに、現実は、多くの企業でそれができていません。
ある年齢になったら管理職となり、オジサンはいまだに管理監督を行っています。その証拠に日本では、管理職の割合が増えるいっぽうなのです。
人というのは、自分の存在意義を示すために、わざわざ不要な仕事を生み出してしまう生き物ですから、管理職になったオジサンたちは、暇であることがバレないように、多くの「(本質的には無駄な)管理作業」を生み出してしまっているのです。
皆さんの会社にも、無駄な管理作業はとても多いんじゃないでしょうか。これは必要な作業だと大義名分を唱えるオジサンもいるでしょうが、それは本当でしょうか。
管理監督の作業というのは、本質的には、内向きな作業です。
ゆえに、ほとんどの場合、付加価値を生み出しません。つまり、管理監督作業が多ければ多いほど、それが真に付加価値に繋がるものでもない限り、労働生産性は下がるということです。
日本人よ、勇気をもって合理的になれ

このように、①過剰品質と②重すぎる管理が日本の弱点です。
過剰品質については、オモテナシという表現で良いものとして理解されている場合も多いでしょう。重すぎる管理についても、これは必要な管理だという声もあるでしょう。
もちろん、これらは完全に悪だということではないです。しかし、労働生産性を間違いなく下げており、労働生産性が低くなれば、私たちの時間単価が下がるということです。
たとえば、100万円稼ぐのに、日本だと150時間かかる場合、アメリカだと100時間で稼げるということですよね。その分、アメリカ人は、余った50時間で家族や友人と素敵な時間を過ごしているわけです。
日本の労働生産性を上げるには、これまで正しいと思っていたことを改め、勇気をもって「無駄なものは無駄」「できないものはできない」「帰るときは帰る」といった合理的な判断をしていかなければならないということです。
そして、それを社会全体で行っていく必要があるということです。
皆さんの人生がより幸せな時間に充てられるように、これからも情報を発信していきますので、よろしくお願いします。